いつもの朝と、うれしい腹痛の予感
2008/05/11(Sun)
朝、目がさめると今までの出来事が夢じゃないかと思う・・・・・

しかし、まぶしく暑さを感じるほどに窓から差し込むサイゴンの日差し。

けたたましく鳴り止まぬカブの音。
ベッドの上から眺める高い天井のこの部屋、無造作に置いてあるスーツケース、
この大きなベットと、デスクしか目に映らない普段と違う部屋。

さらに・・・・・・
デスクの上には、
知らない間に僕のスーツケースに入っていた彼女の写真。

そして昨日、ベトナムの女の子からプレゼントされた
木工芸品の帆船。
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夢じゃない・・・・・

―月曜の朝。

そんな・・まだすっきりしない頭の中で、朝食のためダイニングへ向かう

「あれ、随分すっきりしてきたなぁ〜」

髪を切ってきた僕をはじめて見て工場長が言ってきた。

.....昨日、美容院に行ってきました。

「美容院(びよういん)ならいいが、
病院(びょういん)のお世話にだけはならないよう気をつけて行動しないとな。」


.....はい。

「誰かさんが病院のお世話になって、まだ起きてこれない人がいるくらいだからな。」

.....ん?

そういえば、朝食の席に北沢さんの姿がない。

昨日、寮に戻ってから北沢さんと、工場長の姿がなかったのは、
工場長が付き添いで一緒に病院へ行ってたんだ。

.....何かあったんですか?

「あったんじゃなくてあたったんだ!」

.....まさか、バイクにあたったんじゃ・・・?

「食べ物だよ。・・何でもおいしいからって、
生の魚貝類を無神経に多く食べたんだ・・」


.....はぁ.....

「日本にいる感覚で何でも口に入れるからあたったんだ!」

僕も美容院で氷の入ったコーラーを頂いたぞ・・・・・

「後藤はお腹の調子は良好か?」

.....はい、とくには・・・・

「彼女と食事を楽しんだそうじゃないか?」

「美容院へ連れてってもらったんだってね。」

「その後どこへ行ったんだ?」

昨日の出来事を課長に話したのでみんな僕に聞いているのである。

そんなことには耳を傾けず、フランスパンを食べることに専念してると・・・

「若いっていいねぇ〜」・・・・・部長の一言。

この言葉を聞いて、夢じゃない・・・
ここベトナムにいるだと再認識した。

朝食をとり、いつものバンで少しなじんだサイゴンの風景を流しながら工場へ着くと・・


「What happend to Mr,Kitazawa?」(北沢さんはどうしたの?)

・・・・・「Mr,Kitazawa to anything wrong?」(どこか悪いの?)

工場では、北沢さんが出勤していないことで
エンジニアからワーカーたちと、いろいろと質問された。

みんな、北沢さんのことを心配しているのだろう・・・

もちろん、当の北沢さんは腹痛で寝込んでいて今日はお休みだ。

しかし、ちょっと北沢さんがうらやましかった。
僕よりたった一ヶ月前にここベトナム工場に来て
これだけの人に関心されるとは思わなかったからだ。

ついでに僕が髪を切ったことについても、関心されたが・・・・・

「後藤君、今月と来月のオーダー表だ。」

.....はい。

そ、仕事面で早くみんなから関心、いや感心されるようがんばらなくっちゃ。

部長からオーダー表を受け取るとすぐに、グループのエンジニアたちと、
オーダー表に基づいた生産計画を立てなければならないのだ。

「Mr,Gotou ! free this evening・・・?」(今夜、空いてますか・・?)

そこへエンジニアのTonが僕に話し掛けてきた。

「・・・this evening your welcome party・・・OK?」(あなたの歓迎会をやりたい・・)

なんでも今夜、Tonのグループたちで僕の歓迎会をしてくれるそうだ。

妙にうれしかった。
日本人スタッフに歓迎されるよりも、
工場で働く現地スタッフに歓迎されることが何よりうれしいからだ。

.....Yes, OK!

別に今夜、予定などあるわけもなく気持ちよく承諾した。

「・・・good party ・・・and good Vietnamese food ・・for you・・・」

.....ベトナムズフード?

「Yes、very、very、delicious!」

腹痛で休んでいる北沢さんが頭をよぎった。

帰りに総務のタムさんのとこで薬(正露丸)をもらっておかなきゃ・・・・・

こう見えて僕の胃袋はデリケートなのである。
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おかしなカップル
2008/02/11(Mon)
朝の心地よい風を切ってサイゴン市内にあるレストランへと来ている。

もちろん僕がいい店など知るわけもなく、
彼女の思うがままに着いて行くしかないのであるが。

.....レストラン、タン、ニエン?

店の中は、現地の家族連れなどで結構賑やかである。
こんなに繁盛してるってことはきっとおいしい店なんだろうなぁ・・・

彼女はというとメニューも見ずにウエイターに注文を決めていた。

「Anything to drink ?」(何、飲む?)

.....ン〜.....セ、セブンアップ!

隣のテーブルの7upの缶が目に入った。

「This is a nice restaurant」(ここは、良い食堂なの)

彼女は僕を見つめてそう言った。

彼女のその言葉にうそはなかった。

すぐに運ばれてきた料理は、
日本でいうお粥のようなものだったが、
一口食べて・・・

....うまい。

「・・What's?」(・・なに?)

.....あ、ベリィ、デリッシャズ。

チャオ・ガーといって
お粥(かゆ)の上に鶏肉などの具がちりばめられている現地の定番メニューだ。

ただのお粥(かゆ)がこんなにもおいしい料理に化けるなんて・・

携帯電話で言うなら、予想外!

ただ、僕がうまそうに食べている様子を見ている彼女はとても満足そうな感じだ。

立場が逆だなぁ〜
僕は思った。

「オ・イ・シ・イ」
彼女は、突然たどたどしい日本語で口を開いた。

.....ソ、ソウ、イエス、ジャパニーズ、オイシイ。

「・・・Vietnamese ngon !」(ベトナム語は、ゴン!)

....ゴ、ゴン?

「ハイ。」

おいしいはベトナム語でゴンかぁ・・

工場長の言うとおりに
彼女とお友達になれば自然とベトナム語が身に付いてきそうだ。

.....オカユ、オイシイ。

僕は彼女に日本語で言って返してみた。

「オ、カ、ユシイ?」

.....オカシイ?

確かに周りから見るとおかしい二人である。



食事を済ませた後、
再び彼女のバイクの後ろに乗ってサイゴン市内を走った。

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サイゴン大教会から中央郵便局、そして市民劇場。

ホーチミン市内の観光名所を一般の観光客とは違った視野で見学しているのだ。
最初、周りの目線みたいなものを感じて恥ずかしかったのに、
いま、こうして快適な時間を彼女と楽しんでいるのである。

.....つぎはどこ行くの?...ネクスト、ウェア〜!

彼女はサイゴン市内から少し外れた細い路地へとバイクを走らせていた。

そこはいくつもの雑貨店や美容院が列をなして建っている。

その外には井戸端会議よろしくといったように、
ここの住民たちが路肩にたむろしていた。

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そこへ、彼女はひとつの美容院の前でバイクを止めた。

.....ワット、ドゥイング?

「・・・・・goi dau va cat toc.・・・・・」(・・・・・シャンプーとカットね)

.............................はぁ?

どうやら僕の髪を切るらしい。
確かに伸びてはいるが・・・・・

.....ん?

彼女は僕の方を見ながら
なにやら美容院の店員と打ち合わせをしている。

その店員はせいぜい23,4ぐらいの女性だ。
そして、その店員に導かれるままに
僕はそこ(美容院)にある黒の大きなシートに座らせられた。

もう、どうにでもなれである。

何たって、彼女はというと僕の隣の席で髪をとかしているし、
店員は淡々と僕の髪を切り始めているからなのである。

「・・・・・dep, dep trai !!」

デェップ・チャイ?....確かハンサムという意味だ。
ここの美容院のママさんが僕に話しかけてきた。

「・・become beautiful !」

ベトナムも日本の美容院とそんなに変わらない。

口もうまいのである。

無論、髪を切る表情は真剣そのもので

もちろんカミソリだって安心して身を任せられたのはいうまでもない。

シャンプー後のホースから出る冷たい水の心地よさ、
フェイスマッサージ中の爽快感。

幼い時に母に連れてきてもらった床屋を思い出す。
こんなに気持ちよかったような・・

しかし、これだけやってもらっていくらになるんだろう?
最後のセット(髪の仕上げ)をしてもらってる間そんなことも考えていた。

「Good!」

彼女が僕を見ながら言った。

「dep trai !」(ハンサムよ!)

美容院の店員も大きな鏡を持ってきて、
僕の頭の後ろから横にかけて鏡に写し出しながら言った。

.....う〜ん。

とりあえず、すっきりはしたのかな。

....ん?

彼女が美容院代を精算して払っていた。

.....ハゥ、マッチ?

僕は彼女に言った。

.....ハゥ、マッチ、.....ハゥ、マッチ!

ここの美容院代も先ほどのレストラン同様に、僕に払わせてくれ。
と、彼女に訴えながらの、.....ハゥ、マッチ!なのだ。

「・・・no need!」

.....ノー、ノー!

と、少し興奮したように僕は、財布を彼女の前につきだした。

日本だと、これだけのことをしてもらう美容院はえらい高いぞ!!

僕は彼女に20ドルを突き出すように渡した。

「・・・・・・!」

その行為に彼女はおどろいていた。

「just a moment・・・・・」

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彼女はそう言うと一人、店を出ていった。

......えっ。気を悪くした?

何か悪いことでもしたのかなぁ?

僕は、店員の方を助けを求める目をしながら見た。

店員は笑ってた。

何もかも知っている様子の店員が、
氷の入った冷たいコーラを持ってきてくれた。

.....どこへ行ったんだよ〜

しばらくすると彼女は手に荷物を持って戻ってきた。

......あ!!

その荷物はとてもカラフルな包装紙に包んである少し大きめのものだ。

......ん?

それを彼女は僕に渡しながら言った。

「キョウノ、オモイデ、タメノ・・プレゼント・・」

..................。

彼女の精一杯の口からこぼれる日本語が僕の心を打つ。

僕が渡した20ドルで、
彼女は今日の記念となるプレゼントを買ってきたのである。

.....これ、僕に?

「ハイ。」

..................。

僕は言葉が出なかった。

それは、彼女の持っているやさしさに触れた瞬間でもあった。

後に、今日の日のお金はお姉さんからもらったんだと聞かされた。

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そして、休日のデート〜ヴァンギエム寺〜
2008/01/30(Wed)
こんなデートは初めてだった。

そう、僕は、いま・・・

仕事でベトナムに来て間もないというのに

まだ、あって間もない異国の異性と

知らない異国の街を走っているのだ。

それは・・考えもしないことだった。

でも、この感触はなんだろう、なぜか・・・とても心地よく、

懐かしく・・そして、心がときめくような緊張感さえ感じる。

大好きな娘と初めてデートしている気さえ感じた。

この知らない遠い街で・・

自然と目の前にいる彼女に・・気持ちが落ち着かないのである。

それは、時たま見せる彼女の自然で甘えたような笑顔が
僕をそうさせるのかもしれない。

彼女のほうは、僕をどう感じているのだろう・・・

そんなことを感じながらも、
僕は彼女のバイクの後ろに乗って

ヴァンギエム寺に来ていた。

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そこはホン・ハーの寮から空港を横切って
市内へ向かう通り(ナムキーコイギア通り)にある。

何でも日本留学から帰国した僧が開いた寺らしい。

その本堂の横には大きな七重の塔が目に入る。

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そういえば、工場に向かう途中のバンの窓外からは、
この塔はとても目立っていた記憶がある。

境内に入ると大きな長い線香を持った子供たちが、
物売りよろしくといったように歩み寄ってきた。

彼女(トゥイちゃん)の方はその子供たちを追い払うわけでもなく、
束になってる線香を2束買うと片方を僕に渡した。

ん?.........と思うまもなく

また違うグループの子供たちが、
今度はさっき買った線香に火をつけるのにマッチを持って歩み寄って来たのである。

火をつけるのにもお金を取るのである。

ここでは何でも商売なのだ。

僕はこの子供たちをうざいと感じるのだが、彼女の方はそうでもなさそうだ。

「Come here ! Mr,Gotou・・・・・!」

・・・・・

彼女がなにやら手振りで僕に、
私と同じことをするようにとジェスチャーよろしくと言ったようにやっている。

ぼくは、彼女の言われるとおりのまねをした。

この先、本堂に入るところで束に持ってる線香のうち数本を大きな香炉に立てて、
中に入った。

そこは日本にある寺の本堂と変わりなく、
どこか不思議な世界だった。

彼女はというと・・・

本堂奥の中央で線香を持って崇拝していた。

僕も彼女のいうとおりに同じように崇拝した。
さらに彼女は左奥に進み、
いくつか列をなしている香炉に線香を一本一本立てていった。
その香炉の上には僧侶らしき肖像の大きな写真が並んでいる。

彼女は何を拝んでいたのだろう・・・・・?

仕事以外でも言葉の通じないもどかしさを痛感した。

本堂を出るとさっきまで深刻そうに拝んでた顔と打って変り、
ふただび甘えたような笑みを浮かべ僕の袖を引っ張る彼女がそこにいた。

.....かわいい。

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その笑顔は、思わず抱きしめたくなるほど眩しかった。

・・・カメラ持ってくればよかった・・・

「Shall we go out and have breakfast now !」(朝食を食べに行きましょう!)

.....Breakfast?......イエス!オッケー、オッケー!

そういえば、まだ朝食を食べてなかった。

彼女は預けていたバイクを取ってきてそう言った。

バイクのシート部には殴り書きのような数字が白墨で書かれている。
どうやら駐車券の意味があるらしい。

.....ハゥ、マッ、チ?

線香代やマッチ代、さらにここの駐車券も彼女に払ってもらっていては、
男としてのプライドが許さないのだ。

しかし、
「No,need・・・・・」と言って、
僕が押しつけるお金を彼女は受け取ろうとしないのだ。

彼女はまだ、学生のはず、

お金を受け取らない行為に、逆に少し不安を感じたが、
ここは、彼女にすべてを甘えさせてもらうことにした。

いや、何もかもがはじめて体験するこの先の不思議なデートに不安を感じていた。
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それぞれの休日
2008/01/14(Mon)
今日はベトナム滞在時にして初めての休日(日曜日)である。
昨日の夜は休み前ということでみんな遅くまで飲みに出かけたようだ。

よって、思う・・・

まだ、みんな寝てるんだろうなぁ〜と、

もちろん、昨夜は僕も寮のみんなに誘われてはいたが、
ちょうど寮に戻ったときに日本にいる彼女から国際電話がかかってきたために、
みんなのお誘いを低調にお断りしたのである。

なぜなら、電話での彼女の声を聞くと、とても飲みに出かける気分になれなかったのだ。

電話の向こうの声はとても近くに感じるのにとても遠かった。

休み前なのに予定のない週末・・・寂しいよ。

僕だって・・・

お互いが共感した淋しい週末なのだ。


さてと、日曜日・・・昨夜同様、僕には辛い休日となりそうだな、
なんたって予定がないし・・
それにまだ、一人で街へ出掛ける勇気もない・・・・・・

そんなことを思いながらも
寮の一階にあるリビングに降りると一日遅れの日本の新聞を見ていた部長がいた。

.....あっ、部長、おはようございます!..お早いですね。

「おはよう!・・・朝食はもう食べたか。」

.....いいえ、まだです。

「日曜日はお手伝いさんも休みだから朝食は適当に食べないとな。」

.....はい。

「冷蔵庫に何かあるから勝手に台所を使うといいよ。」

.....そういえばまだみんな起きてこないんですか?

「もう、とっくに起きて出かけてるよ。」

.....えっ。

「課長は英会話教室、北沢君はダンス教室、工場長は朝のジョギングだろう・・・・

後藤君は何か今日は予定があるのかな?」


.....い、いえ、もちろん何もありません。

「だったら一緒にサイゴン市内をぶらついてみるか?」

.....はい!お願いします。

ジリリリリリリリリリリィ・・・・・・・

「ん?インターホンだな・・・工場長が帰ってきたのかな?」

部長が、腰をおさえながら立ち上がろうとすると、

.....あっ、部長、僕が出ますよ。

「あ〜そうか、頼むよ。」

寮の門を開けるとそこには両手いっぱいの袋を持った工場長が立っていた。

.....おはようございます、工場長!

「おはよう!」

.....何をこんなにいっぱい買ってきたんですか?

「カレーライスの材料だよ、本格的に作ろうと思ってなっ、後藤も手伝うか?」

.....はい、あっ!、いえ...これから部長とサイゴン市内に・・・

「そうかぁ〜」

.....すいません。

「あやまることはない、いいんじゃないかな、ここに来て初めての休日なんだから・・
定番の市内観光をするといい。」


......はい。


しかし、みんながみんな、休日の過ごし方を心得ているんだなぁ〜
まだ、みんな寝てるんだろうなぁ〜なんて少しでも思った自分が恥ずかしい。


ジリリリリリリリリリリィ・・・・・・・

「また、誰か帰ってきたのかな?」

.....そういえば、工場長も含め、なんで、みんな寮の鍵を持ってないんですか?

「普段はお手伝いさんやウオッチマンがいるからなぁ〜今持ってるのは寮長でもある課長だけ、
そのうちみんなに渡せるよう手配中・・・。」


そういって今度は部長が扉の門の方へと駆け寄った。

すると、扉の門の外から部長が、

「後藤君!・・お客さんだよ。」

と、大きな声が飛び込んできた。

.....誰だろう?

「さぁ〜、誰でしょう?」

部長が僕の方へと、羨ましそうな笑顔を浮かべて僕の肩を叩いて行った。

.....この前の.......

「かわいいお客さんみたいだね。」

そこには、亜麻色の香りとアオザイが眩しかった・・・・あのトゥイちゃんが立っていた。

「どうやら、今日のサイゴン市内へ行くお相手は私ではないようだな、若いっていいねぇ・・」

.....部長。

「ほら、後藤!早く着替えてこんかい!」

.....工場長まで......

彼女は扉の前で笑っていた。・・ほんとに僕を誘いに来たらしい。

しかし、どうして?

工場長が片方だけの目のしわを寄せた。

....工場長?

工場長が僕に向けて怪しい笑みを浮かべたのだ。

どうやら工場長と課長が組んで呼び出したらしい。

「ほら、レディを待たせるもんじゃない!」
工場長が僕の尻を叩いて言った。

彼女はまた笑っていた。

その笑顔はものすごく自然で、屈託がなかった。

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そう、このときの彼女の笑顔がこの先の長いベトナム生活の中で
どんなに心強く励まされるとは・・・・・思いもよらなかっただろう。
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ペイント マイ ラブ
2008/01/06(Sun)
だっだ広い空間------

デスク---工作盤(機)--その一つ一つが大きく見える。

いまはまだ、閑散としたもの作りだけの工場だからだ。
現地の作業員(労働者)たちも
いくつかのグループに分担されているものの、ただ与えられた仕事をこなしている。

僕は昨日一日、彼らの仕事ぶりを見て、
たどたどしい英語と手振りで、
現地のエンジニアと話し合いそれぞれにグループリーダーを選び出した。

それぞれのセクションの上に総括するエンジニアがいて、
その下にワーカーたちを仕切る(指導)するグループリーダーを立てた。

エンジニア以外は英語を話せないので、僕の伝えたいことはすべてエンジニアを通してである。

「Are you tired ?」(疲れましたか?)

エンジニアのTonが僕に言った。

.....アイム、ア、リトル、タイト・・・・

ほんとは精神的にだいぶ疲れていた。
作業の段取りを含め、すべてがふりだしからのスタートだから・・

昼食も、ろくにのどを通さず、
早朝にトゥイちゃんからもらったテープの音楽が昼休みの癒しになった。

「What's listen to the music ?」(何を聴いているの?)

昼休みも終わろうとしている中、

総務のタムさんが小さなバナナ(モンキーバナナ)を僕に差し出して問いかけてきた。

.....センキュ.....ディス、ワン?.....アイ、スインク..ビューティーフルミュージック。

僕が聞いていたテープをタムさんに聞かせると、

「I know!・・・It's Michel Learns To Lock!」

どうやらマイケルラーンズ・トゥ・ロックというグループが歌ってるらしい。

「This song ・・Paint My Love・・・」

.....ペイント・マイ・ラブ?

まだ、何も染まってない私に色をつけてほしいという歌詞らしい。

「Do you have girlfriend?」

タムさんがヘッドホンを片手に、僕に尋ねてきた。

.....イ、イエス、アイ、ハブ。

「Vietnamese?」

.....ノー、ノー!ジャパニーズ.....オンリーワン!

「Making Vietnamese girlfriend?」

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タムさんが意味ありげに尋ねると、

「Paint My Love?」

と笑って言い出した。

・・・・・・・・・
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